水道水の塩素
更新日:2025年03月21日 その他コラム
水道水に塩素が入っていることをご存じの方は多いかと思いますが、何のために塩素を加えているのか、その詳細をご存じの方は少ないのではないかと思います。
人間が生きていくうえで水は欠かせないものです。
歴史上、人類は飲み水を確保するために様々な努力をしてきました。
その中で問題になるのが病原微生物の汚染です。
水道設備が整備されている以前は、腸チフス、細菌性赤痢、コレラといった水が原因となる感染症の流行が度々起きていました。
現在でも、病原微生物に汚染された井戸水が原因で集団感染が起きています。
主な症状としては、腹痛、下痢、嘔吐などがあり、病原微生物に対する抵抗力が低い人の場合は命に関わることがあります。
塩素消毒はこのような事態を未然に防ぐことを目的としています。
塩素を水に溶かすと、塩素が水と反応して次亜塩素酸とそれがイオン化した次亜塩素酸イオンという物質が生成されます。
これらの物質は強い酸化作用を持っており、その作用によって菌体膜を破壊、酵素を失活させ、殺菌作用を示します。
一方で、殺菌作用を示す濃度は、人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある濃度の1/1000以下とかなり低いため、塩素の酸化作用が人の影響に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。
水道水の場合は、浄水場にて様々な処理が行われた後、各家庭に送る直前の段階で行われています。
そこから、各家庭の水道の蛇口まで消毒された状態を維持する必要があるため、蛇口から出てくる時点においても正常に保つよう法律によって定められています。
我が国において初めて塩素消毒が行われたのは1922年のことで、常に塩素消毒を行うようになったのは終戦を迎えてからになります。
それ以降、水道が普及し、塩素消毒された水道水の供給に伴って、水系感染症にかかる人の数も減少していきました。
井戸水に関しても飲料水として利用する際には、塩素消毒をするよう各自治体が注意喚起を行っています。
このように、水の塩素消毒は、人々の健康な生活に大きく貢献しています。
しかし、塩素消毒にも欠点があります。
塩素の反応性の高さが殺菌作用に関与しているのですが、その一方で塩素が水中の成分と反応することで様々な副生成物できることが知られています。
その中で知られているのがトリハロメタンです。
トリハロメタンは、クロロホルムのようなメタンの3つの水素原子がハロゲンに置換された化合物のことで、発がん性を持つものがあることがしられています。
濃度が高いと問題ですが、WHOでは様々な動物実験の結果からガイドラインを定めており、わが国ではそれを基に、総トリハロメタンの濃度が0.1㎎/Ⅼ以下になるように基準を定めています。
この濃度は、動物実験によって発がん性が認められる濃度よりもかなり低いため、水道水を飲み続けるとがんになりやすいということはないと考えられます。
また、塩素消毒に耐性を持つ病原微生物であるクリプトスポリジウムによる集団感染が問題となってきています。
特に水道水が汚染された場合は深刻で、1996年に埼玉県で13000人のうち、8000人が腹痛、下痢を起こしたという事例があります。
これを受けて、厚生労働省ではその対策指針を定めています。
具体的には紫外線照射装置の設置、ろ過などによる除去があります。
クリプトスポリジウムは熱に弱いため、煮沸するという形で、家庭においても対策が可能です。
塩素消毒には幾つか問題点があるものの、その対策はとられていますし、水の安全性を確保するうえで、なくてはならないものです。
塩素消毒についてよく理解できれば、日本の水道水は安全であることが理解できるのではないでしょうか。